■ガイドラインだけが全てではない
しかも、臨床の現場では、ガイドラインにおける降圧目標値だけで治療方針を
決めることはありません。
高血圧の標準治療において、高齢者に対する治療方針は、若年層とは異なります。
若い患者さんは、今後の人生を考えると厳格な降圧治療から得られる利益が大きいもの。
一方、高齢の患者さんは治療から得られる利益が相対的に小さく、副作用も出やすいためです。
降圧剤の副作用で腎機能が低下したり、立ちくらみが起こったりする場合は、
無理に血圧を下げないようにします。
患者さんの価値観も大事です。
少しでも将来の心疾患リスクを下げたい患者さんもいれば、
将来のリスクを重視するよりもあまり薬を飲みたくないという患者さんもいます。
そもそも臨床試験に参加できるような「元気な高齢者」に対する降圧治療の有用性は
確認されていますが、高齢者がみな元気とは限りません。
筋力低下や認知症などといった身体的機能や認知機能の低下がある高齢者に対する
降圧治療の有用性については十分なエビデンスがないのです。
いくつかの観察研究によると、身体機能や認知機能が低下した高齢者の場合、
高血圧の治療を受けているほうが死亡率が高いことが示されています。
臨床医は血圧を治療しているのではなく患者さんを治療しているので、
個別の事情を考慮して治療方針を変えるのが普通です。
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