●割礼・小児包茎手術は性的虐待か?(聖隷浜松病院泌尿器科主任 今井 伸 医長)
アメリカ合衆国では、性病、陰茎がんなどの予防に効果があるとされ、
1990年代までは生まれた男児の多くが出生直後に包皮切除手術を受けていた。
衛生上の必要性は薄いことが示されるようになり、
手術自体も新生児にとってハイリスクかつ非人道的との意見が強まって、
1998年に小児科学会から包皮切除を推奨しないガイドラインが提出された。
これを受け、包皮切除を受ける男児は全米で減少してきている。
21世紀に入ってからもなお 6割程度が包皮切除手術を受けているが、
「身体の統一性」および「自己の決定権」という意識から、
生まれたときに勝手に行われた包皮切除を嫌い、包皮の復元手術を行い
「ナチュラル・ペニス」にしようとする人も少なくない。
近代化以前の、上下水道や抗生物質のない時代においては、
亀頭包皮炎や尿路感染症などの疾患を予防するために、
割礼は必要な処置であったかもしれないが、少なくとも現代の先進国においては、
小児期に割礼・環状切除術を施行する医学的根拠はほとんどないという。
一方で、割礼は宗教的、習俗的な意味合いを持ち合わせていることも多く、
医学的根拠を理由に手術を拒否することも難しいが、個人的な意見としては、
亀頭包皮炎などの疾患のない乳幼児に対する包茎手術は虐待に近いと思う。
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