さらに、同記事は「国内の対応が甘いことに、研究者は懸念を抱いている」と書いているが、私がこれまでに農薬問題を約30年間取材した経験から言って、
この種のリスクの問題で「懸念を抱いている」とみられる研究者は100人の科学者のうち、多くて数人だろう。
そのたった数人の研究者の異端的な意見を、さも大多数の研究者が抱く懸念かのごとく、記事の前文で報じることに作為的な悪意を感じる。
この前文を読むだけで、この記者は科学的で正確な事実を読者に伝えようと努力していないことが読み取れる。
■米国で恐るべき訴訟
同記事にも出てくるが、いまグリホサートをめぐって、米国では恐るべき訴訟が起きている。
科学を重視する科学者にとっては、背筋が寒くなるような訴訟ビジネスの実態だ。──どんな訴訟なのか?
グリホサートを使っていた市民たちが「白血球のがんになったのはグリホサートが原因だ」とカリフォルニア州地方裁判所に訴訟を起こしたのだ。
これまでの3件(2018年8月〜今年5月)ではいずれも原告側の市民が勝訴している。
なんとこの3件で陪審員は補償的損害と懲罰的損害を合わせて、約300億円、約80億円、約2200億円(1ドル100円で換算)もの賠償金の支払いを命じた。
のちに判事の裁定でそれぞれ約80億円、約25億、約90億円に減額されたものの、途方もない賠償金に違いはない。
被告の農薬メーカーは旧モンサント社(現在はドイツのバイエル)。
控訴中でまだ決着はついていないが、恐るべきは、同様の訴訟が米国内で18000件以上も起きていることだ。
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