日本人の食事摂取基準 たんぱく質(2010年版)
・耐容上限量の項全文
たんぱく質の耐容上限量は、たんぱく質の過剰摂取により生じる健康障害を根拠に設定されなけ
ればならない。しかし現時点では、たんぱく質の耐容上限量を策定し得る明確な根拠となる報告
は十分には見当たらない。そこで、耐容上限量は設定しないこととした。
しかし、40歳以下の健康な成人に1.9〜2. 2 g/kg 体重/日のたんぱく質を一定期間摂取させると、
インスリンの感受性低下、酸・シュウ酸塩・カルシウムの尿排泄増加、糸球体ろ過量の増加、骨
吸収の増加、血漿グルタミン濃度の低下などの好ましくない代謝変化が生じることが報告されて
いる。また、65歳以上の男性に2g/kg 体重 /日以上のたんぱく質を摂取させると、血中尿素窒素
が 10. 7 mmol/L以上に上昇し、高窒素血症が発症することが報告されている。これらの報告より、
成人においては年齢にかかわらず、たんぱく質摂取は 2. 0g/kg 体重 /日未満に留めるのが適当
である。
日本人の食事摂取基準 たんぱく質(2015年版)
・耐容上限量の項より抜粋
しかし、日本人を含む調査によれば、たんぱく質の過剰摂取が糖尿病や心血管疾患の発症リスク
増加につながる可能性がある。たんぱく質エネルギー比率が 20% エネルギーを超えた場合の健
康障害として、糖尿病発症リスクの増加、心血管疾患の増加、がんの発症率の増加、骨量の減少、
BMI の増加などが挙げられる。
たんぱく質と糖尿病発症リスクとの関係を認めた研究並びに、最近の系統的レビューでは、これ
らのどの事象についても明らかな関連を結論することはできないとしながら、たんぱく質エネル
ギー比率が 20% エネルギーを超えた場合の安全性は確認できないと述べ、注意を喚起している。
・たんぱく質と重症化予防との関連の項より抜粋
CKD 患者におけるたんぱく質の上限量を決める科学的根拠は明確ではないが、国際的な腎臓病学
団体であるKDIGO(Kidney Disease:Improving Global Outcomes)のガイドラインでは、進行す
るリスクのある CKD 患者では 1.3g/kg/日を超えるたんぱく質を摂取しないことを推奨している。
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