菊池さんは、「普通ならば常識ある人は騙されないはずだという暗黙の前提があるようですが、
それはおそらく逆で、事実でないことでも事実のように信じてしまう思考傾向は、
もともと人の心理システムに組み込まれており、簡単には騙されない思考こそ、
そのシステムに逆らっているととらえる方が、より適切で建設的だと考えられる」と言うのです。
このような心理システムは、人類が進化の中で獲得したものです。
拙著『面白くて眠れなくなる人類進化』(PHP研究所、2015年)から、
猿人から現在の新入に至る道筋をざっと見てみましょう。
われわれの祖先は、もともと樹上に暮らしていました。
その先祖が木から降りて地上に住むようになった結果、初期猿人、猿人、原人、旧人、
新人という段階を経て進化してきたと考えられています。
約20万年前から現在までが新人の時代です。ァフリカでホモ・サピエンスが誕生し、
約6万年前にアフリカからホモ・サピエンス(一部混血)が世界中に拡散しました。
そして、約1万年前には農耕と牧畜を開始しました。
いつから今のような心理システムになったかは、現代人のような言語能力の開始と関係があることでしょう。
これは、約4万年前の芸術や宗教などの抽象的な思考の発達と関連して考える研究者が多いようです。
当時のヒトが描いたと思われる壁画を見ると、彼らが言語能力をともなう創造力を通して、
大自然にふれ、それについて考えていたことが想像できます。
返信する