もう一つ注目すべきことは、過去を回想することは老人によく見られるということです。
アイオワ大学のラッセル・ノイエス博士は、この点に注目しています。
老人の場合、過去の回想はその意味を確かめるという役割も担っています。
つまり、老人が現実の生活や社会から離れて過去に意味を見出そうとする行為に臨死体験のパノラマ的回想が似ていると言うのです。
それによって限りある人生(=死)を受け入れ、心の平安を保とうとするのです。
死の恐怖で危機に瀕した人は「時のない瞬間」に安全を求めると思われます。
人が自分の過去の体験の中に入り込んでいる時には、死は存在しなくなります。
このため、過去の経験、特に喜びに満ちた体験は意識に不安をのぼらせません。
殊に子供の時の想い出はそうです。その頃は体験も強烈で、人生の中でも悩みを知らない頃だからです。
このように自分の意識を想い出にのめりこませることは、離脱現象も伴います。
つまり、自分は事故現場では第三者になっているのです。
死んだ自分や嘆き悲しむ家族を自分は雲の上から見ることによって、死の恐怖を自分のものではない事として考えることにより、
不安を和らげようとするのだと考えられます。
この「体から抜け出て自分を見下ろしている」という感覚は解離性障害の症状ですが、これもまた側頭葉への電気刺激により
人工的に再現することが出来ます。
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